3DCGのフォトリアル表現を突き詰める【木材編】
どうすれば木のテクスチャをリアルに出来るのか。
なぜあの人が作る3DCGのウッドはフォトリアルなのか。
まず、LIT designのCG制作プロセスとして「レタッチや合成を極力使わないフル3DCG」が大きな特徴です。
画像は編集すればするほど劣化するからです。
LIT designはCGプロダクションに例を見ない程にあらゆるウッド素材のサンプルがあります。
今回は木のフォトリアル表現に不可欠な「木材の知識」について紹介していきます。
知っておくだけで木材の表現に迷うことが減るはずです。
木材のフォトリアルCG表現テクニックの前に
木材はご存じの通り、木を製材したものです。
フローリングや壁、扉、収納家具、置き家具などCG制作でよく使う素材です。
人は何を見て「木」で出来ていると判断するか。
視覚的要素として“木目が木材を認識する最も重要な特徴”です。
リアルな表現を再現する為に、この木目の正体や木というマテリアルについて掘り下げていきましょう。
木材の組織と木目の種類
夏と冬の木が育つ生長速度の違いによって細胞組織の密度が異なり、その模様を「年輪」と呼んでいます。
外樹皮・内樹皮・形成層・木部と名称がついており、木部の中にも辺材・心材・髄と名称がついています。それぞれに特徴があります。
木目の柄には「木口」「板目」「柾目」「杢目」と切り出す場所や条件で呼び名がついています。
正しく理解すれば3DCG制作においてテクスチャの方向がハチャメチャになる事はありません。
木目の中にある節
樹木から出る枝の跡を「節」とよびますが、材木業界ではこの節の有無で等級が付いています。
等級が高い順に「無節」→「上小節」→「小節」→「節あり」と分類されています。
無節:節が無い
上小節:直径6mm程度までの上小節と呼ばれる小さな節があるが、あまり目立たない
小節:直径20mm程度までの小節がある。
節あり:小節より大きな節が存在する。
柄によって希少性が異なり、同じ木材でも高級な部位から安価なものまであります。
・格式高い空間なら節の無い柄
・カジュアルな空間には節が沢山あるテクスチャ
という傾向を知っておけば、空間や制作シーンによっての使い分けがスムーズです。
知っているだけで精度の高いCGとなり、説得力のあるフォトリアル3DCGとなります。
フォトリアルな木のディテール表現
究極のフォトリアル3DCGの制作。
それは「どれだけ対象物に寄れるのか」というところになります。ディテールがフォトリアルの全てといっても過言ではありません。
木の表面を近くで観察してみると、木目以外の小さな柄がみえてきます。
これは樹木が根から吸った水を吸い上げるための道管の断面です。
木材を形成する細胞組織の他に「木口面にはツブツブ」「板目、柾目面には筋」といった模様があります。
出典:佐伯浩「木材の構造 : 走査電子顕微鏡図説」より
ここまで木の事を知れば、どのように木を削り出したらどんな柄になるかの理解が出来たとおもいます。
樹種によって異なる特徴
樹木をおおきく分けると2種類「針葉樹」「広葉樹」があります。
その名の通り、細い針のような葉っぱが「針葉樹」、平たく広い葉っぱをした「広葉樹」といった分類になります。
針葉樹:ヒノキ、杉、パイン(松)など
特徴は、加工がしやすく柔らかくて軽量。生長が早く、大きなものが入手しやすい。
広葉樹:オーク、ナラ、ウォールナットなど
特徴は硬くて重い。生長が遅い。
更に広葉樹の中でも葉っぱが冬になると落ちる「落葉樹」と、年中緑の葉っぱがついている「常緑樹」があります。
家具で使われることが多いのが「落葉広葉樹」です。細胞の密度が高いので、硬くて傷がつきにくい為です。
家具でよくつかわれる樹種(落葉広葉樹):オーク、ナラ、ウォールナット、チーク、ブナ、ホワイトアッシュ、チェリー、タモなど
木材の加工と種類
無垢材、集成材、積層材、合板(ベニヤ板)など、目的に応じて加工されていく木材ですが、その製造過程・種類によってもテクスチャに特徴があります。
無垢材
原木を切り出してから、何も継ぎ足しや貼り付けをしていない無垢の木材
集成材・積層材
レンガ状やブロック状の木材を重ね合わせたり貼り合わせた木材。
合板材
薄くスライスした木材を、木目が直交するように重ね合わせて張り合わせた木材。
OSBボード
原木を削り出したチップ状の木片を接着剤と高温でプレスして製造されるパネル。
ここまでの内容で、多面体の木材の面が全て同じ木目になることは基本的には無い事がわかりました。
各面において切り出された部位の質感が異なるため表情も異なります。曲面で成り立つ形状の場合はその部位毎の特徴が連なり合うため、更に表現の難易度があがります。
CG制作の場合も同様で、テクスチャ設定を木材の性質に沿って行いましょう。
面取り加工
板材や柱などの角張った木材のコーナー部分を見てみると、加工されているものが殆どです。これは他の加工資材も同様で、CGでよく見かけるピン角の物体がありますが生活シーンでは基本的にありえません。
3DCG制作においても形状を整える事が必要で、「C面取り」「糸面取り」「R面取り」と面取りの幅や形状により呼び名が異なり、これもまた木目の表情が異なる面となります。
突板加工
これらの例外として、突板(単板)と呼ばれる、木材を薄くスライスしたものをベニヤ板や下地材に練りつける方法があります。
木目のパターンや構造について記述しましたが、突板を使用した場合は全ての面を木目にすることも可能だという事も知っておきましょう。
メーカー家具など、均一な品質を担保する場合に使われることが多いです。
むしろ既製品の家具の場合、突板で仕上げられている製品の方が多いです。
全て無垢の木材で制作するのは高額になったり、木材の伸縮や反りが発生するなどの理由です。
木材を模した内装材
実物の木材より安く、施工もし易い材料として木目をプリントしたパネルやフィルム等の資材が存在しますが、3DCGの世界で敢えてそれを使用する事は少ないと思いますので割愛します。
木に限らずですが、切り出す場所・形状によって生じる違いや特徴を捉える事が3DCG制作において大切です。
まだまだ書くことはありますが、また随時追加していきます。